後継者をどう育てるかという問題、これも木材流通業者にとって大事な問題です。ある程度のまとまった山林を持っている林業家で、自分の息子を林業からはずしたいと思っている人はまずいないでしょう。息子が実際に林業を継いでくれるかくれないかは別として、親は林業を継いで欲しいと願っているに違いありません。けれども、材木屋の場合には、親の方が「もうこんな商売あかん」と見こしてしまっているためか、息子を材木屋にならせたくないと思っている人が多いようです。あるいは逆に、親は「こんなにいい商売はない」と思っていても、息子に大学までの教育をつけたばっかりに、「わしは材木屋みたいなのはよう継がん」と息子から言われることが多いようです。
私は、その一番の原因は、母親が我が家の商売に不足を言うからではないかと思っています。「お父ちゃんは、同業の会合や会合やいうて飲みによう出ていく」とか、「朝から晩まで日曜日まで働いて、あんた、うちの子供に材木屋みたいなものをやらさんといて」というようなことを母親が言うのではないか。サラリーマン家庭でも同じようですが、得てして母親が親父のいない時に父親のことや稼業に対し、不服、不足を言うのではないでしょうか。そのために、本来、子供は親に対する信頼感を皆持っているのだけれども、父親に対する信頼の芽を、知らず知らずのうちにつみ取ってしまう。そこに問題があるのではないかと思っております。
ですから、少なくとも自分の息子に材木屋を継がせたい、あるいは林業を継がせたいと考えたならば、自分のお親父さんのやっていることは働き甲斐のあることであり、一般社会に貢献している、男子一生の仕事としてやり甲斐のある仕事であるということを、家族全員が認識していることが一番大事なことです。それが、後継者づくりの原点ではないかと思います。
「家和すれば百事成る」が、私の家の家訓の一つですが、後継者づくりは幼児から始まると考えています。