つぎに、管理監督者には「判断力」が求められるとするのが四五%を占めていますが、この「判断力」というのは、端的に言うと、これは良いことなのか悪いことなのか、これはしてよいことなのかしてはいけないことなのか、前後の事情を総合して物事の是非曲直を心の中に決めることで、何が善であり何が悪であるかは時代とともに徐々に変わってゆくものですけれども、しかし、その時代時代に応じた良いことと悪いことへの判断というものは、他人から教えてもらうことではなく、自分自身で常につちかっておかねばならないものであることを、肝に銘じておく必要があります。美しいものか、それともみにくいものかといった問題などはまさにそうで、美しさを感じる能力を平生からつちかっておかないと、正しい判断をすることができないわけです。
私たちが製品を作り売り出すとき、その製品のデザインが一般大衆から受けるか受けないかを社内で討議してみると、人によって随分違う意見が出てきます。こうしたことから、ある経営者は、「反対の者が多いものを採用するんや」とさえ言っています。なぜなら、いま賛成の者が多い商品はすでに終わっている商品であり、反対の者が多い商品はこれからのものであるから、と言うわけです。こういうことを言う経営者がいるほど、判断の基準というものは多様で・変化するものであり、それだけに十分考えてゆく必要があります。 商売をする者の立場から言うと、まず①それによってお金が儲かるかどうか、②そのことが使ってもらう人のためになるかどうか、③原料が今後とも続くのかどうか、④使う人にとって工程が容易なものであるのかどうか、⑤これから五年、一〇年と、一般の人々に使われるという将来展望があるのかどうか――、といったいくつかの物差しが必要です。そういう物差しを持っているかどうかが、判断力の決め手になりましょう。そして、判断をしたあとの「決断」と「実行」ということが、一番問題になってきます。