とはいえ、この創意企画力というのは、一本筋のものではないものですから、創意企画力を発揮するためには、幅広い能力を持っている必要があります。そのためには、仕事一本というのでは幅広い能力は身につかないので、仕事と一寸離れた趣味を持つということが必要になります。趣味を持つということは、商売と全然はずれたことのように思われ勝ちですが、そうではないので、趣味を持つことによって、仕事の中からだけでは得られない幅広い感覚や、外から現在の仕事を見る眼を養うことができるはずです。 最近の若い子の中にはマンガばかりを読んでいて、「私の趣味は読書や」なんて言う者もいますが、本はしっかりと読むようにしたい。マンガであれば、空想マンガもよい。われわれも子供の時に盛んに空想マンガを読みましたけれど、当時は、空想だとされていたものが、現在ではほとんど現実のもになっているのですから、将来への・未来への感覚や想像力を養ってゆくには、荒唐無稽と思われる空想マンガからも、得るものがありましょう。
そのことと関連しますが、発想の転換――違う視点から物事を考えてみることが大切です。なにか新しいものを作ろうという時には、それを作る方、それを使う方、それを販売する方、さらにはそのものが廃棄された時にはどうなるかというような、いろいろの視点からそのものについて考えてみる。作る機械について考える時には、機械そのものになって、「その機械がわれわれ人間についてどう思っているかなあ」といった内からの視点からも考えていくことが、創意企画力というものではないでしょうか。