私は成熟期の先輩と話をするのが好きです。また、先輩から聞いたことを若い人と一緒になって自分達のものにするのも好きですが、その道をきわめた人の一言には傾聴に値するものが多い。 先日も建具商の先輩からこんな話しを聞きました。「高野山の桧は二番木、木曽の御料の木は元木が良い。高野の木と高知の木は雨戸によい。共に男性的だからだ」と言うのです。他に悪い材の所も言っていましたが、現在は大分その方は改善されているから、割愛しました。また、ある大工の棟梁から、「わが国の三五角(一〇・五cm角)の柱を使用している木造住宅では約五〇年の耐久性、四寸角(一二cm角)を使えば百年、五寸角(一五cm角)の柱を使えば二百年の寿命だ」という話を聞かされました。
また、構造の先生から『一寸角に一貫』と言う諺があることを聞きました。木材の負担荷重のことで、一寸角に一貫の負担荷重であれば絶対大丈夫と言うのです。
現在、特に木材に関しては良く知っている人が次第に少なくなってきています。いまのうちに自分達の手に、先輩の知識を引き継いで置きたい。知識は誰からも奪われません。