力のあるうちに投資をしておくということに関連して、昔から言われていることに、「お金に余裕ができたときには、担保力をつけるために不動産を買っておきなさい」ということがあります。このことについては、高度経済成長期の昭和三〇年代に土地を買っておいた人はうまいこと行ったのだけれど、四〇年代にそれをやった人は裏目に出たというように、経済情勢の変動に伴って、裏目に出る場合と本目に出る場合との二通りがあるので、一概に担保力をつけるために余裕のある人は土地を買っておきなさいということは出来ません。低成長期に入って、土地の値上がりが金利を上回るというようなことはむつかしくなって行くでしょう。闇雲に値上がりをアテにして使いものにならにような土地を買ったりすると、逆に足を引っ張られることになります。けれども、余裕のあるときは土地を買って担保力をつけておくことは、やはり大事な心掛けのひとつでありましょう。
土地などに投資している余裕など全くないにもかかわらず、すぐ売却できない土地に投資をして倒産に追い込まれた会社がありますが、そうした倒産会社の事例などを見るとき、経営において調和と不調和とのバランスをとることが、いかに大事でありかつ難かしいものであるということに気付かされます。
自分で復元できる範囲内であれば投資によって一時会社を不調和状態にすること、それによってある種の活力を引き出そうとすることもいいとは思いますが、基本は常に人、物、金、信用、情報、そしてメーカーにとっては技術、この五つの調和を図ってゆかなければならないでしょう。