また、力のある間に新しい投資をしなくてはいけない。日々の商売の中にどっぷり漬っていると、そうは言ってもなかなかできがたいことですが、そうした心掛けを持たなければならない。
ミシンのリッカーが倒産した翌日の新聞の社説に、結局、他の会社にくらべて新しいものへのチャレンジが不足していたところにリッカー倒産の原因があると述べられていました。力のある間に新しい投資をしなかったことが他の会社に負けた原因であるというのです。業績のよいときに得々としていて、力がなくなってからあわてて新しい部門へ投資をしたということでは、三年間の赤字に耐えられないという結果になった。新しい事業を始めたら、始めてから二年や三年間は赤字になっても止むを得ないわけで、そのことを考えたならば、やはり力のある間に投資をして、新しい仕事にチャレンジをしておくべきでした。
力のある間に新しい投資をしておけば、当初は赤字であったその新しい仕事がだんだん充実してきて黒字になってくる。その時には、前からの儲けていた部門はだんだん斜陽になってきて、いままでの仕事と新しい仕事がうまくすり変わって行く。そのように、うまく仕事をすりかえてゆくことが経営をやっていく上でのコツでありましょう。しかも、企業が元気なときに次々と手を打ってゆけば、社員の気力も充実していくわけです。ですから、現在の仕事も新しい仕事も、両方ともうまく回転してゆくのではないでしょうか。