木材流通

第6章 材価格のメカニズムと対応策

いまや、杉は「新製品」である

 国産材と外材とが競合するしばらくの間の問題点を考える場合に、私は、国産材が外材に席捲された昭和三五、三六、三七年という、この三年間の状況を、いま一度振り返ってみる必要があろうと思います。

 昭和三五年~三七年という三年間こそ、国産材が外材――その主流である米材に取って替えられた年なのですが、その時の状況を振り返ってみると、当時は国産材の業者のほとんどが、「こんなに注文がきたらかなわん。もう内地材の注文はせんといてほしい」と言うような時代で、「早く外材に替えたい」と思っていたのです。ですから、大阪木材青年経営者協議会は大阪府や大阪市の公団住宅をはじめとする建築屋さんをバスに乗せて、外材の入っている港とか外材製材工場を見せて、「米栂はこんな材ですよ、米松はこんな材なんですよ。これなら安心して大量に使えまっしゃろ」というような宣伝をしたわけです。

 さて今度は、国産材が沢山出てくるということになって、木材を取り扱っている者の感覚からすれば、「内地の杉みたいなものは常識で誰でも知っているやないか」と思っているわけですけれども、そうではないということを先ず知っておかなければならない。四年前の大阪国際見本市で経験したことですが、焼杉で作った木製の門扉を「これプラスチックですか、うまく木に似せてますな」と質問され、さらに「何という木ですか」と聞かれ、「杉の製品です」と答えると、「杉とはどこの国の木ですか」と聞かれ、くどくどと杉は日本の木ですと説明させられたことがあります。これが一般大衆の理解度なのです。桧が日本のよい木であることは『法隆寺を支えた木』(西岡常一・小原二郎著)の出版以来、いろいろな所で語られ、よく知られるようになりました。「杉」の字が昭和五七年四月からようやく小学校の国語の教科書で教えるようになったところですから(「桧」の字はまだ教えていない)やむを得ないとしても、これから一番大量に出てくる杉のよさは、初歩から大いにPRしなければならないことを知らなければなりません。

 とくに、今度は住宅公団とか府や市の建築関係の設計屋さんとかを連れて、「内地材はこんなにいいものですよ」と、国産材のよさを知ってもらう努力をしなければならない。昭和三六年に「こんな弱い米栂が使えるかいな」と言った人はもうそろそろ第一線をしりぞかれていて、その息子の大工さんが「わしの親父がそんなこと言うたのか、わしはそんなん知らんでえ」と言うわけですから、現在工事をやっておられる人、設計をやっておられる人に、米栂と国産材の違いを説明する、国産材のよさをPRする、理解してもらう、そういう必要がいま出てきているように思います。

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