第一章の<価格管理>のところで、昭和三五年までの外材が大量に入荷しない時代は、需要と供給の物理的距離が短いため、需要の大小で価格が決まり、官公需および大手の私企業の需要が出てくる時期、すなわち関西であれば甲子園の高校野球大会が終わってから、言いかえれば旧盆が終わって、八月下旬から木材価格は高騰し、十二月は暫時値下がりをして、二~三月と上昇し、四、五、六月と値下がりが続いてゆくという価格変動パターンが続いたが、外材大量入荷が始まってから最近までは、特に建築用のある米材に関しては、需要のいかんよりも内地の港に米材在庫が何ヵ月分あるか、アメリカから船が何隻走っているか、アメリカに日本向け用材がどれだけあるかによって価格が上下してきた――と述べました。さらに、このようにわが国国内の木材需要と直接関係なく外材の供給によって木材価格が左右されるようになったところに木材業界が儲からなくなった原因があり、外材大量供給のがある、と述べました。
しかし、いまや約二〇年間にわたる外材大量供給時代の価格変動パターンに変化が出始めています。すなわち、米材の在庫率が従来の価格分岐点から下がって、その価格が上がらなければならないのに、国産材の供給比重が相対的に高まってきたために、上がらなくなっているのです。こうした状況は、国産材時代に移行してゆくなかで、若干の変化をしながらしだいに強まっていくのではないか、いまはそのはしりではないか、と思われます。もし今後、米材価格がアメリカの住宅事情の好転で上昇すればするほど、国産材の供給がその穴を埋めることになるでしょう。わが国の合板価格が上がれば、韓国や台湾のコンパネが入荷して国内合板価格を冷やしたのと同じパターンです。木材価格が下がって国産材が減り、木材価格が上がって国産材が増加するというようなことを一年の間に何回か繰り返しながら、年間一~二%前後の国産材供給率が増加してゆくというのが、これからいわゆる国産材時代に移行してゆく時期での基調になるであろう、と考えられます。