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木材流通

第4章 木材供給の変化をどう見るか

昭和七一年の外材シェアは五〇%そこそこになる

ある商社の木材部長さんと次のような会話をかわしたことがあります。 私「あなたの会社の木材部は現在何名ですか」 部長「随分減少したけれど、六五人くらいかな」「昭和三六年頃は何人くらいでしたか」「三五名くらいだったかな」「それでは、いまのままの商売なら、半分の人員にならなければいけませんな」「ウェ!しかし中川さん、日本の出材費は高すぎるし、所有面積が小さすぎるから能率が上がりませんわな。山になんぼ木があっても、町に出てこなければ何にもなりません。私達は日本の木材が、消費地の流通市場に大量に出てくるとは思われない」「そこが外材ばかり見ているあなたと、外材と内地材の両方をみている私との違いですな!もち論、内地の山の関係者が、いまのままのふくろ手で何もしないと、あなたの言うとおりになるでしょう。しかし、有力な森林組合には若い職員も育林班も育って、林道もたくさん入れて雨の日も仕事ができる場を作って、通年雇用をして着々とやっていますからね。これからの一〇年間が双方にとって勝負どころでしょう」

 そこで、木材業者の立場として、多少強引ではありますが、国産材が主導権を握る時期を想定しておきましょう。 林野庁の「林産物の長期需給見通し」(昭和五五年策定)によると、昭和七一年に外材シェアは五六・七%に減少するとしていますが、この予測には疑問を感じます。この木材需給バランスの根拠になっている数値は、建設省サイドの五ヵ年計画で年間一五〇万戸の新設住宅を建設するという予想値に基づいて算出されたものだからです。すなわち、一五〇万戸の住宅がコンスタントに建設されるという見通しのもと、一億三、三二〇万?の木材需要量を見込んでいるからです(もち論、その中にはパルプ用材の需要も入っていますが)。国産材供給量はその時に五、七七〇万?、外材は五五〇万?を見込んでおり、その外材シェアが五六・七%とであると予想しているわけです。しかし、この住宅生産一五〇万戸というのは、明らかに過大見積です。なるほど昭和四八年には年間一九〇万戸というピーク時がありましたが、すでに昭和四九年には年間一三〇万戸と落ち込んでおり、五九年においても年間一二〇万戸位(木造率も五〇~五二%)に落着くのではないでしょうか。

 世界の国々をみると、住宅着工数は人口の〇・五~一%です。アメリカは二億人の人口で二〇〇万戸の住宅を建設したこともありますが、昭和五七年度は一〇〇万戸余に止まり、五八年度は約一七〇万戸でした。それでいくと、日本の人口は一億二〇〇〇万人ですから六〇万戸から一二〇万戸の間に止まるということになりましょう。フランスは六百万人の人口で、新設住宅建設は三〇万戸です。ただ、ヨーロッパは石の建設であり、二百~三百年の耐久性を持っているので、日本と同列視はできません。

 したがって、私は、ここ五~一〇年の間は、新設住宅着工量は、年間一〇〇万戸前後で推移するのではないかと推測しています。ただ、新設着工以外に増改築が急増しています。これは、土地が高過ぎるからと、家族構成の変化と、より高度な家庭生活の追究にほかなりませんが、そのことはともかく、新設着工量は減少しても、それを上回る増改築が見込まれ、住宅産業にも希望はあると考えています。つまり、増改築はこれまで約二兆円の規模でしたが、六~八兆円になることも予想され、また、住宅着工量も、増改築が四〇万戸あれば、結局、年間一三〇万戸位の着工量に見合った木材の使用量が望めるわけです。 以上から、展望される木材需要量は一億?を切って、昭和四三年の水準に戻ってゆくのではないかと思っています。昭和四三年というのは、初めて外材供給量が国産材供給量を上回わった年です。結論的に言えば、林野庁の予測では、昭和七一年に外材のシェアが五六・七%になるとしていますが、私はその頃には外材のシェアは五〇%を切るか、切らなくても五〇%そこそこに落着くのではないかと予測しているのです。

 林野庁でも目下四回目の長期需要の見通しにかかっています。現在の状況にあった新たな見通しが出されることと思います。

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