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マダガスカルの巨樹バオバブを訪ねて

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1.はじめに

マダガスカルは南半球に位置し、その面積は日本の1.6倍あり、世界で4番目に大きい島(大陸島)である。マダガスカルは、7-8千万年程前にゴンドワナ大陸の分裂によってできたものである。マダガスカルは熱帯圏に属し、降雨量は500~300mmのところから2,000mmのところまである。

この島に見られる動植物の80~85%が固有種で、進化の面ではガラバコス島よりスケールが大きい島ではないかといわれている。

基本植生は、熱帯林、サバンナ、乾生落葉樹林、乾生林と大別されている。ここには、多肉植物、貯水する植物、樹皮下光合成植物、短枝植物、壺形植物といわれているものが多く見られる。この島には、針葉樹は存在せず、バオバブが多く見られ、バオバブランドともいわれている。

2.バオバブ

バオバブはキワタ科(Bombacaceae)に属している。世界に10種あるバオバブのうち、8種がマダガスカルに存在し、そのうちの7種が固有種である。

バオバブは、アフリカ大陸ではサバンナにしか見られないが、マダガスカルでは海辺、川岸、岩場、森林などにも広く分布している。バオバブの幹の内部はスポンジ状で、その中に水を貯えることができ、多いものでは10トンに達するという。

バオバブは、葉のみならず幹にもクロロフィールをもち、いわゆる樹皮下光合成を行っている。この場合、樹皮はサングラスのように光を通すことができる。

(1)樹形

バオバブの樹形は種によって特性があるとされているが、同じ種でも生育環境が異なると、その樹形に著しい違いが見られる。

例えば、グランディデリー・バオバブの樹形は場所により大きな違いが見られる。

また、フニー・バオバブでは、「相思相愛の木」と呼ばれている2本の幹が絡み合った状態のものが見られたが、このような幹のねじれた樹形はほかにも見られるという

(2)直径、樹高

このたび見ることのできた胸高直径の最大は6m余りであった。しかし、マダガスカルには胸高直径7.5mのものがあるといわれている。

なお、バオバブには地際直径より胸高直径の方が大きいものがしばしば見られる。

樹高は、それほど高いものが見られなく、高いもので25m余りであったが、島内には30mのものもあるという。

(3)樹齢

バオバブの樹齢は、かつて最高は5150年で世界最高といわれたこともあったが、現在では2000年くらいが最高ではないかとされている。バオバブの樹齢は、測定がむずかしいこともあって、まだはっきりしないといってよい。

マダガスカルは、日本のように四季の変化がないことから明確な年輪の形成は認められない。しかし、ここには雨季、乾季があるために年輪に似た成長輪があるとされている。この成長輪もかならずしも明確でないことや大きな木になると幹の内部が洞になることが多いため、樹齢の測定を一層困難にしている。

(4)後継樹

バオバブは、単木状態で生息しているものが多く、群生しているものでも樹冠が閉鎖状態の林分はほとんど見られなかった

バオバブの巨樹の周辺は、生育空間が十分あり、生育をさまたげる競争相手も少ないと見られるにもかかわらず、後継樹となるべき若木や稚苗は極端に少なかった。

マダガスカルでは、いまバオバブの減少が問題になっているとのことである。

減少の原因として、サトウキビ等の栽培のための開墾によって伐採されていること、樹皮が広く利用されているため台風に対する抵抗力が弱くなり倒れやすくなっていること、コブウシが野外で放牧されており、その飼料である野草を育てるため野焼きが行われ、それによって発生した稚苗が燃えてしまうこと、稚苗の発生に必要な種子が、人間が果実を採取して利用することによって減少していることなどがあげられている。

そのほかに、バオバブの自生地の多くは雨量の少ない乾燥地にあるため、種子の発芽がむずかしく、また発芽してもその生育がむずかしいのだということもいわれている。

(5)利用

バオバブは、人間とのかかわりの極めて深い樹種である。

(ⅰ)材:バオバブの材は、紡錘形放射組織は多いが木化する導管と木部繊維が少ないためやわらかく建築材などの用材としての利用価値は低い。しかし、幹部は水を貯える水槽などとして利用されてきた。

(ⅱ)樹皮:樹皮は最も広く利用されてきたものである。勒皮繊維がよく発達し、樹皮部は層状にはげやすく、かつ大変丈夫である。そのため、住宅の屋根や壁などによく利用されている。

その他、縄、網、籠、工芸品などの多くの分野で利用されている。

バオバブの樹皮は広く利用されているため、大きな木の多くは幹の一部がはぎとられている。しかし、再生能力が強いため、はがされたあとは残るとしても樹皮はほぼ完全に再生してしまう。

なお、巨樹の多くは幹の内部が洞になっているが、中には洞の表面がほとんど樹皮化しているものが認められた。これは、洞の入口周辺のまきこみの発達によるもののみとは考えにくいものであった。

(ⅲ)果肉、種子、葉:果肉はお菓子や清涼飲料として、種子は食料、食用油や石鹸の材料として、葉は薬の原料として、果実の殻は容器としてなど広く利用されている。

(6)神木

バオバブの巨樹の中には、神木といわれているものがある。これは、マダガスカルの唯一の神であるザナハリの住むところとされている。このような神木はあちこちにみられるという。

この神木には白い衣とか赤い衣など目立った色のものがかけられる。そして、酒や肉をささげてお願いごとをするのである。

 なお、この神木は、本来、種族の王がお祈りするところであったため、かつては一般の人は近づくことはできなかったという。


その他

バオバブは、童話「星の王子さま」にでてくる木としてよく知られている。

そのほか、マダガスカルでは通貨や切手の図案として使用され、セネガルでは幹の洞がお墓として、オーストラリアでは洞が牢屋として使用されていたという。

(注)本報告は、2000年8月にマダガスカルのムロンベ地方とムロンダバ地方を訪れたときのものである。