42 |
造作 |
造作 |
二階建の銅張りの店構えは、三四年前表だけを造作したもので、裏の方は崖に支えられている |
42 |
柱 |
柱の足 |
三四年前表だけを造作したもので、裏の方は崖に支えられている柱の足を根つぎして古い住宅のままを使っている。 |
42 |
根つぎ |
根つぎ |
三四年前表だけを造作したもので、裏の方は崖に支えられている柱の足を根つぎして古い住宅のままを使っている。 |
42 |
家作 |
家作 |
古くからある普通の鮨屋だが、商売不振で、先代の持主は看板ごと家作をともよの両親に譲って、店もだんだん行き立って来た。 |
42 |
造作 |
造作 |
腕を仕込んだ職人だけに、周囲の状況を察して、鮨の品質を上げて行くに造作もなかった。 |
43 |
木石 |
木石 |
人間というより木石(ぼくせき)の如く、はたの神経とはまったく無交渉な様子で黙々といくつかの鮨を |
45 |
柱 |
柱の根 |
すると、畳敷の方の柱の根に横坐りにして見ていた内儀(かみ)さん |
45 |
根 |
柱の根 |
すると、畳敷の方の柱の根に横坐りにして見ていた内儀(かみ)さん |
47 |
杭根 |
杭根 |
新茶のような青い水の中に尾鰭(おひれ)を閃(ひら)めかしては、杭根(くいね)の苔こけを食はんで、また流れ去って行く。 |
48 |
杭根 |
杭根 |
自分は杭根のみどりの苔のように感じた。 |
50 |
木 |
木がくれ |
眺めるのは開け放してある奥座敷を通して眼に入る裏の谷合の木がくれの沢地か、水を撒(ま)いてある表通りに、 |
50 |
シイ |
椎の葉 |
谷合の木がくれの沢地か、水を撒(ま)いてある表通りに、向うの塀から垂れ下がっている椎の葉の茂みかどちらかである。 |
50 |
葉 |
椎の葉 |
谷合の木がくれの沢地か、水を撒(ま)いてある表通りに、向うの塀から垂れ下がっている椎の葉の茂みかどちらかである。 |
54 |
新樹 |
新樹 |
湊は今更のように漲(みなぎ)り亘る新樹(しんじゅ)の季節を見廻し、ふうっと息を空に吹いて |
57 |
床の間 |
床の間 |
床の間の冷たく透き通った水晶の置きものに、 |
59 |
ウメ |
生梅 |
酸味のある柔いものなら何でも噛んだ。生梅や橘の実をもいで来て噛んだ。 |
59 |
タチバナ |
橘の実 |
酸味のある柔いものなら何でも噛んだ。生梅や橘の実をもいで来て噛んだ。 |
59 |
実 |
橘の実 |
酸味のある柔いものなら何でも噛んだ。生梅や橘の実をもいで来て噛んだ。 |
59 |
乾板 |
乾板 |
一度読んだり聞いたりしたものは、すぐ判って乾板のように脳の襞(ひだ)に焼きつけた。 |
60 |
鬢つけ |
鬢(びん)つけ |
赤いゆもじや飯炊婆さんの横顔になぞってある黒鬢(びん)つけの印象が胸の中を暴力のように掻き廻した。 |
60 |
青葉 |
青葉 |
その翌日であった。母親は青葉の映りの濃く射す縁側へ新しい茣蓙(ござ)を敷き、俎板(まないた)だの庖丁だの水桶だの蠅帳だの持ち出した。 |
60 |
縁側 |
縁側 |
母親は青葉の映りの濃く射す縁側へ新しい茣蓙(ござ)を敷き、俎板(まないた)だの庖丁だの水桶だの蠅帳だの持ち出した。 |
60 |
俎板 |
俎板 |
縁側へ新しい茣蓙(ござ)を敷き、俎板(まないた)だの庖丁だの水桶だの蠅帳だの持ち出した。 |
60 |
水桶 |
水桶 |
縁側へ新しい茣蓙(ござ)を敷き、俎板(まないた)だの庖丁だの水桶だの蠅帳だの持ち出した。 |
60 |
俎板 |
俎板 |
母親は自分と俎板を距てた向側に子供を坐らせた。 |
60 |
バラ |
薔薇いろ |
母親は、腕捲りして、薔薇いろの掌を差出して手品師のように、手の裏表を返して子供に見せた。 |
64 |
バラ |
薔薇いろの手を子供の眼の前に近づけ、母はまたも手品師のように |
薔薇いろの手を子供の眼の前に近づけ、母はまたも手品師のように |
65 |
バラ |
薔薇いろ |
目の前の母親は、飯粒のついた薔薇いろの手をぱんぱんと子供の前で気もちよさそうにはたいた。 |
65 |
ザクロ |
ざくろの花 |
ざくろの花のような色の赤貝の身だの、 |
67 |
藤棚 |
藤棚 |
二人の坐っている病院の焼跡のひとところに支えの朽た藤棚があって、おどろのように藤蔓(ふじづる)が宙から |
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藤蔓 |
藤蔓 |
支えの朽た藤棚があって、おどろのように藤蔓(ふじづる)が宙から地上に這い下り、 |
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蔓 |
蔓 |
それでも蔓の尖さきの方には若葉を一ぱいつけ、その間から痩せたうす紫の花房が雫しずくのように咲き垂れている。 |
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若葉 |
若葉 |
それでも蔓の尖さきの方には若葉を一ぱいつけ、その間から痩せたうす紫の花房が雫しずくのように咲き垂れている。 |
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ヤシオツツジ |
やしおの躑躅 |
庭石の根締めになっていたやしおの躑躅が石を運び去られたあとの穴の側に半面、黝(あおぐろ)く枯れて火のあおりのあとを残しながら、半面に白い花をつけている。 |
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シュロ |
棕梠の木 |
二人のいる近くに一本立っている太い棕梠の木の影が、草叢(くさむら)の上にだんだん斜にかかって来た。 |
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木 |
棕梠の木 |
二人のいる近くに一本立っている太い棕梠の木の影が、草叢(くさむら)の上にだんだん斜にかかって来た。 |