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タイ南部のヤシノキ

・読売新聞 2008/7/3
タイ南部には豊かな水田がひろがっているが、風景を変えつつある。近年のバイオ燃料ブームにより、水田から燃料になるアブラヤシの栽培地へ変化しつつある。アブラヤシは高さ20メートルにもなり、果実に多くの油脂を含む。タイでは石油を輸入に依存しており、2003年からはガソリンなどに代わる燃料、バイオ燃料の導入を積極的に進めている。タイ政府はアブラヤシの栽培地を年間10万ヘクタールも増やす目標を掲げる。アブラヤシの苗木や耕作1年目には無料で科学肥料が農家に配られた。地域によっては、水田が10年ほどで半減しているとい う。しかし、タイ全体でみればコメの生産量、輸出量は伸びている。南部の元々コメの生産性が低い湿地帯などがアブラヤシの栽培地となっており、稲作全体への影響は小さいと見る。 しかし、必ずしもリスクが無いわけではない。バイオ燃料ブームの影響でアブラヤシの買い付け価格は2年前の2倍にも値上がりしている。タイ南部では1980年~90年代にエビの養殖が盛んだった。しかし、相場の下落により廃業が相次いだ。バイオ燃料の原料であるアブラヤシは需要と供給のバランス、投機マネーの影響を非常に受けやすい。また、周囲への環境へのリスクもある。アブラヤシの栽培の為には周囲の雑木などを伐採する必要があるため、周囲の生態系への影響が懸念される。また、アブラヤシは土壌から多くの養分を吸収するため、大量を科学肥料を与える必要があるが、これは土壌の劣化を招く。 増えてゆくアブラヤシとは反対に伐採により現象する植物もある。タイ南部の湿地帯に自生するサゴヤシである。サゴヤシは樹幹に多くのデンプンを蓄積している。そのデンプンは食用となり、パプアニューギニアでは主食にもなっている。タイ南部ではかんがい用水の整備にともない、数が減りつつあり、ナヨーン地区では約7割が失われていた。NGO団体「ヤドフォン協会」ではサゴヤシの有効活用を訴え、サゴヤシを守る方策について農家の女性や小中学校講師らとともに話しあいを重ねた。その結果、地区の至る所に無断伐採を禁じるサゴヤシの保護林が誕生した。 現在、世界の人口は67億人だが、2030年には80億人以上に増えるという。食料農業機構(FAO)ではこの人口の食料需要を満たすためには、穀物類の生産を1.5倍にする必要があるという。地球上の農業に適した土地のほとんどは開発し尽くされている。そこに、近年のバイオ燃料ブーム。食料生産と、原料生産用の土地が競合する問題が発生している。競合ではなく、条件の悪い土地の活用、持続可能な形での有効活用を行い、両立できる農業が求められている。

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