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貴重な人工林

・産経新聞 2012/4/3

スギといえば、秋田スギ、吉野スギ、屋久スギなど林業上の地域名を思い浮かべるがスギは日本固有種であり、今から約700万年~500万年前のスギ化石が秋田県の田沢湖周辺の地層から発見されている。約200万年前の日本列島に出現したスギが、氷河期を生き延び「生きた化石」として現在もある珍しい裸子植物である。島根県の三瓶小豆原埋没林に約3500年前の三瓶山の火山活動で埋没した縄文時代のスギかあり、富山県の魚津埋没林博物館に約2000年前に片貝川の氾濫によって流れ出た土砂で埋没したスギが展示されている。全国各地にスギの丸木舟が縄文・弥生時代の遺跡から出土しており、真っ直ぐ店に向かって成長するスギは信仰の対象であり、神木としてスギの巨樹がある。日本人の生活や宗教と深い関わりのあるスギが、今では花粉症の原因であると非難されている。スギが花粉症の原因であるという説と、人工林比率とスギ花粉症の有症率のグラフが相関関係が逆の結果となり不思議である。人工林比率が高い北陸や九州地方に患者が少ないのは、なぜなのか。他の環境要因の関与についても同時に検討すべきである。スギ花粉の大飛散年は、スギの研究者である平英彰氏によると、前年7月の気温と新葉生産量により決まるという。無花粉スギ品種の開発や花粉がでないスギの人工林に変える計画が進められているが、単視眼的なスギ対策で良いのだろうか。第二次世界大戦後の急激な木材需要のため、外国から木材を多く輸入 し、森林材積量を回復するため拡大造林政策を実施し、スギやヒノキなどの針葉樹を植栽した。造林運動の結果、人工林は1000万ヘクタールにもなったが、まさか30年後 に大量の花粉を生産し国民を悩ませるとは、想定外であっただろう。栃木県で発見され、都市を中心にスギ花粉症患者は1980年代から増え、最近は子どもにまでみられ る。決して、我が国に生育するスギ・ヒノキ人工林は花粉症を引き起こす悪者ではない。ドイツ森林官をうならせた世界にも例がない人工林は、これからの持続可能な地 域社会と我が国の経済発展のための貴重なバイオマス資源であり、適切な利用が期待される。

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