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ブラジル・森をつくる農業

・産経新聞 2011/8/9

世界の熱帯地域で営まれている「アレグロフォレストリー(森林農業)」の先進地として、ブラジル北東部のパラ州にある町トメアスは知られている。10メートルはあるだろうという樹木の木陰に育つカカオの実をもぎ取る農場主の日系3世、セイヤ・タカキさんは「今年はよく熟しているから、おいしいチョコレートができる」と話す。他に熱帯果実であるアサイやグアバがある。一つの土地に作物や木材として売れる木などを植える農林複合経営である森林農業は、「森をつくる農業」とも呼ばれている。年間を通じて収穫があり、単一作物より病害虫や価格暴落の危険が小さく、環境面でも生物多様性を保てると注目を集めている。昨年の12月、「トメアス総合農協」は地域発展貢献賞の最優秀賞に選ばれた。「長年、究極の環境農業を行ってきた」と組合長の日系2世のワタル・サカグチさんは話す。1929年、初めて日本人移民43家族189人が入植した日本人居住地がトメアスであった。初めは胡椒の生産をしており、61年には世界生産の5%である3200トンを500家族で担ったのである。しかし、水害と病害で壊滅し、胡椒に代わるカカオを植えた。カカオは日陰を好むため、木を一緒に植えたことから森林農業が始まったのである。現在、千人の日系人が人口4万8千人の町に暮らしている。アマゾン川沿いに自生するアサイは、ヤシ科の植物でポリフェノールや鉄分を豊富に含んでいる。健康飲料として人気が出たため、農協は熱帯果実を冷凍ジュースへと加工し、2009年には農協の全売上の3分の2である1385万ドル(約7億円)を売り上げた。、ブラジル人の小農へ森林農業の技術を普及に努めてきた農協の理事で鹿児島出身の小長野道則さんは「アマゾンだけでなくアフリカや東南アジアでも熱帯雨林の保全と地域発展の両立に貢献できると思う」と話す。近年、トメアスでは焼畑によって放牧地となり、その後の荒地がアブラヤシ農園となっている。アブラヤシはバイオ燃料や化粧品の原料となり、世界最大の鉄鉱山会社「バーレ」や化粧品メーカー「ナトゥーラ」が農園経営に参入した。「アブラヤシの単一大規模栽培では小農が取り残される」という批判をかわすため、両社はCSR(企業の社会的責任)活動として森林農業を支援するとの見方もある。「大規模な森林破壊によらず、生産性の高い人工林を作ることで小農の収入を補完し、農村への定着に寄与している」と東京農工大学の山田祐彰講師は指摘する。セラード開発による大豆の生産により不毛の地を穀倉地帯へ変えたなど、ブラジル農業の多様性がみられるのである。

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