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減災林の育成

・朝日新聞 2011/9/1

青森県八戸市の東日本大震災での事例をもとに、森林総合研究所(茨城県つくば市)は津波に対するマツの海岸林の効果を検証した。高さ6メートル以上の津波が襲った八戸市市川町には、海岸線から約200メートル離れたところに、奥行き(林帯幅)150メートルほどのクロマツの林が住宅の前に並んでいる。流れてきた10隻ほどの漁船は木々をなぎ倒したが海岸林の中にとどまり、また1階部分が浸水した家があったが壊れて流失することにはならなかったのである。この海岸林による減災効果の検証のために地形などを調べた結果、海岸林の樹高と枝葉の位置が前面では低く、中央から後ろでは高いということを把握した。海岸から約350メートル奥の地点で、林を通った津波が浸水深3.1メートルであったのに対し、海岸林がなかった場合を数値実験モデルで計算したところ浸水深4.4メートルに達した。前面の低い枝葉が水を遮る抵抗として働き、津波を抑える効果があったというのである。また、最大流速は毎秒2.3メートルであったが、海岸林がなかった場合では4.0メートルであった。以上のことから、海岸林は津波の持つエネルギーを減衰させ、漂流物をとどめる効果もあったと考えられた。「海岸林のおかげで津波が内陸へ入るのに時間がかかり、場所によってはこの林の背後で2分程度の差が生じたようである。避難時間の確保にも海岸林の存在は有効であったと考えられる」と研究を担当した野口宏典主任研究員は話す。さらに詳しく、林の構造と水流との関係を把握しモデルの精度を高める方針である。7月13日公表の林野庁の「海岸防災林の再生に関する検討会」(座長・太田猛彦東京大学名誉教授)の中間報告では、「大規模な津波自体を完全に抑止することはできないが、津波エネルギーの減衰効果や漂流物の捕捉効果など被害の軽減効果を発揮している」と海岸林を評価した。しかし、林野庁によると、津波のために浸水した海岸林は、青森県から千葉県までの太平洋岸で約3700ヘクタールにのぼり、木々がなぎ倒されたり、流失したりした被害は岩手、宮城、福島の3県で目立っていた。被害率75%以上の林だけでも約1千ヘクタールにのぼる。「八戸市の例では海岸林が抵抗としてうまく働いたが、岩手県や宮城県では襲来した津波の巨大なエネルギーを受けきれずに失われてしまった林が目立つ」と森林総研気象害・防災林研究室の坂本知己室長は話す。千葉県治山林道協会の報告書によると、海岸林近くの人々の実感する効果として、防風67%、飛砂防止64%、塩害防止47%、津波被害軽減28%……(複数回答可)といった数字が並んだ。このことから海岸林が日常的に防風や飛砂防止の機能を発揮してきていることがわかる。「海岸林は多くの役割を果たしてきた。復旧を急ぎ、機能の強化を考えていきたい」と検討会座長の太田名誉教授は意気込んでいる。また、林野庁の産地災害対策室の井上晋室長は「地盤を高める盛土や根の緊縛力を強める工夫にによる強化は可能である。個々の林の再生方法は、地域の実情や生態系保全の必要性に応じて検討することになる」と話す。

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