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国産漆の危機

・読売新聞 2010/8/17

蒔絵や螺鈿といった伝統工芸品や寺社建築の修復などに使われる国産の漆の生産量が減少している。戦後の最盛期と比べると5%程度にとどまり、20年前と比較しても30 %にまで落ち込んでいる。安価な輸入漆に需要を奪われている現状に加え、高級品とされる漆製品の売り上げが不況の影響で低迷したことが背景にある。縄文時代から利用されてきた塗料が、存亡の危機にさらされている。林野庁によると、国産漆の生産量は、1960年代半ばまで1万~3万キロで推移してきた。1965年に1万キロを割り込んだ後は、減少傾向が続き、1990年以降は5000キロを下回っている。2008年は1586キロにとどまり、2009年はさらに落ち込むとみられる。国産漆の主産地である岩手県二戸市浄法寺地区。県浄法寺漆生産組合によると、2008年は全国の国産漆の75%に当たる1200キロを生産した。2009年は1500キロを採取したが、急速に進む需要減している。輸入漆の約9割を占める中国産が現在、1キロ7000~8000円なのに対し、国産は4万8000円と6倍以上である。このため、国産漆は近年、漆全体の1~2%にとどまり、京漆器(京都市)や輪島塗(石川県輪島市)など伝統的な漆器産地でも、ほとんどが輸入漆に頼っているのが現状である。気候などの違いから、国産漆は外国産に比べ、透明度、接着力などに優れるといい、最も大きな違いは劣化の速度である。輪島塗の産地、輪島漆器商工業協同組合によると、生産額はピーク時の91年には約180億円あったが、2008年は約65億円に減少したと推計されている。京都漆器工芸協同組合の遊部尋志理事長は「漆器そのものが売れないので、国産漆がなくても困らないことが怖い。このままでは日本の伝統文化はどうなるのか」と訴える。産地復興の取り組みも各地で進んでいる。かつて京都に出荷していた岡山県の「備中漆」。社団法人・林原共済会と県郷土文化財団は1994年から、同県新見、真庭両市の計7.6ヘクタールに2500本を植樹し、すでに採取も始めている。「漆塗り発祥の地」との伝承がある奈良県曽爾村では、住民団体「漆ぬるべ会」が2007、2008両年に計約700本を植樹。今年11月にも約1300本を植える予定で、会長の吉田信夫さん(65)は「国産漆は大切。将来的に地元産の漆で工芸品を作り上げたい」と話す。

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