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宮脇方式の森林

・朝日新聞 2010/10/29

トレードマークの麦わら帽と長靴姿で日本中を歩き、市民団体や企業の植樹を指導してきた宮脇昭氏は「木を植えよう」とそう叫び続けてきた。累計4千万本である。宮脇昭氏は岡山県生まれ、横浜国大助手の時代から年間240日は学生を連れて植生の調査に出ており、現地を知らない研究は意味がないという徹底した現場主義である。100人を超す研究者の協力を得て日本中の植生を綿密に調べ上げた「日本植生誌」全10巻は、1989年に完成した。宮脇氏は1958年にドイツに留学し、人の手が加わらなかったらそこにどんな森ができるかを考える「潜在自然植生」の概念を学んだ。そしてこれを「土地本来の森」「ふるさとの森」と呼ぶ。帰国して愕然とした。ふるさとの森はほとんど残っていないではないか。もともとの木々は伐採され、山は植林された針葉樹で覆われていたのである。そこで猛然と植樹を始め、鎮守の森や古い屋敷林などを見て、その土地に合った樹種を選んだのである。関東近郊ならシイ、カシ、タブなどの常緑広葉樹を中心に、同じ木の純林にならないようにヤブツバキやカエデの苗木をまぜて植え込むという。1平方メートルに3本程度で普通より密に植えられた苗木は競争し、互いに少しずつ我慢をしながら、やがてこんもりとした森となるのである。最初の3年は草取りなどをするが、その後は森は自力で育ち、これは「宮脇方式」と呼ばれる植樹法である。「狭い場所でいいんです。幅1メートルの土地があったら植えなさい。3本植えれば森、5本植えれば森林です」戦後復興以来、建築用材になるスギやヒノキなどで山を埋めてきた林野庁にとって、宮脇は長く「天敵」であったが2009年、林野庁次長だった島田泰助氏は部下が宮脇方式をきちんと知らないことに気づいた。都内のホテルで「天敵」に会ってみると意外にも面白い。広島県の台風被災地の復旧に宮脇の指導を受けようと決め、トップダウンで関係部署に命じた。2009年6月、広葉樹の植林が行われた。宮脇氏はいつもの麦わら帽で林野庁森林管理局の職員たちを指導した。島田氏は「敵対から両輪の関係になれればいい」と言い、宮脇氏は「生きている間に私が国有林に植樹できるなんて思わなかった」と笑った。

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